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アトピー性皮膚炎治療の新しい選択肢「アドトラーザ」。
先週末は、アトピー性皮膚炎治療薬「アドトラーザ(一般名:トラロキヌマブ)」のセミナーに参加するため、金沢へ行ってきました。
アトピー性皮膚炎の治療はここ数年で大きく進歩し、従来の外用療法に加えて、炎症に関わる特定の分子を狙って作用する「生物学的製剤(バイオ製剤)」やJAK阻害薬など、さまざまな治療が選択できるようになっています。
今回はその中でも、IL-13というサイトカインを選択的に抑えるアドトラーザについて、実際の臨床でどのような患者さんに適しているのかを学んできました。
アトピー性皮膚炎と「IL-13」
アトピー性皮膚炎では、免疫の働きに関わるさまざまな「サイトカイン」が炎症に関与しています。
その中でもIL-13は、アトピー性皮膚炎の皮膚で重要な役割を担っているサイトカインのひとつです。
IL-13が過剰に働くと、皮膚の炎症だけではなく、皮膚のバリア機能にも影響します。
セミナーでは、IL-13を抑えることによって炎症を改善するだけでなく、低下していたフィラグリンなど皮膚のバリア機能に関係する因子の改善や、黄色ブドウ球菌の減少、皮膚マイクロバイオームの正常化にもつながる可能性が紹介されていました。
つまり、単に「炎症を止める」だけではなく、アトピー性皮膚炎によって崩れていた皮膚の環境そのものを少しずつ整えていくという考え方です。
アドトラーザは「ゆっくり、長く」効いてくる
今回特に印象に残ったのが、アドトラーザの効果の現れ方です。
JAK阻害薬などは比較的速やかに効果が現れる一方、生物学的製剤は時間をかけて改善していくことがあります。
アドトラーザも、治療開始後16週の時点だけを見ると「思ったほど効いていない」と感じる患者さんがいても、その後さらに改善していくケースがあります。
「受診するたびに少しずつ良くなっていく」
「半年を過ぎた頃から急に改善してくることもある」
というお話が印象的でした。
短期間だけで効果を判断するのではなく、安全性を確保しながら長期的に皮膚を良い状態へ導いていく治療として考えることが大切なのだと思います。
どんな患者さんに向いている?
今回の講演やパネルディスカッションでは、特に
「中等症のアトピー性皮膚炎で、これまで全身療法を受けていない患者さん」
が、アドトラーザの良い適応になり得るというお話がありました。
重症度を評価するEASIという指標では、EASI 16~35程度の患者さんが一つの目安として挙げられていました。
また、
- 頭や首の症状が目立つ方
- 眼の合併症が気になる方
- 高齢の方
- これまで生物学的製剤を使用したことのない方
などにも選択肢になりやすいとのことでした。
一方、非常に重症な場合や、喘息などアトピー性皮膚炎以外の合併症がある場合には、ほかの生物学的製剤を含めて治療を選択します。
大切なのは「どの薬が一番強いか」という単純な比較ではなく、患者さんの重症度、症状の部位、合併症、年齢、これまでの治療歴などから、その方に合った薬を選ぶことです。
結膜炎が心配な患者さんにも
生物学的製剤によるアトピー性皮膚炎治療では、薬剤によっては結膜炎などの眼症状が問題になることがあります。
今回のセミナーでは、アドトラーザはこうした眼症状の頻度が比較的低いことも特徴として紹介されました。
そのため、ほかの生物学的製剤で眼症状が問題となった場合に、アドトラーザへの変更を検討することもあります。
皮膚症状だけでなく、こうした副作用や患者さんの生活への影響まで考えて薬を選択することが大切です。
注射を始めても「塗り薬」は大切
そしてもう一つ、とても大切だと感じたのが外用療法です。
生物学的製剤を開始すると、「注射を始めたから、もう塗り薬は必要ない」と思ってしまう方もいらっしゃいます。
しかし、治療開始時には外用療法をきちんと続けることで相乗効果が期待できます。
生物学的製剤だけに任せるのではなく、
注射で炎症の根本にアプローチしながら、外用療法で皮膚の炎症を抑え、保湿などでバリア機能を守る。
この組み合わせがとても重要です。
アトピー性皮膚炎は「長期的に良い皮膚をつくる」時代へ
以前のアトピー性皮膚炎治療は、「悪くなったら薬を塗って、良くなったらやめる」という治療になりがちでした。
しかし現在は、治療の選択肢が大きく増えています。
症状を一時的に抑えるだけではなく、炎症を長期的にコントロールし、皮膚のバリア機能や皮膚環境を整えながら、できるだけ再燃しにくい良い状態を維持していくことが治療目標になってきています。
今回のセミナーを通して、アドトラーザは特に、
「中等症で、これから生物学的製剤を始める患者さんのファーストチョイスの一つ」
として、とても使いやすい薬なのではないかと感じました。
効果の速さだけを求めるのではなく、安全性や長期的な改善、患者さんの年齢や合併症、経済的な負担まで含めて治療を考える。
アトピー性皮膚炎治療も、ますます「一人ひとりに合わせて治療を選ぶ時代」になってきたと感じた金沢でのセミナーでした。
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