痤瘡(にきび) Acne
痤瘡(にきび)とは
痤瘡(にきび)は、毛穴の出口がつまって中で皮脂が貯まり、それに引き続いて生じる毛包を中心とした炎症性の皮膚疾患です。
多くは13歳頃に発症して20歳前後に自然に軽減するため、思春期の生理的な現象と考えるむきもありますが、最近ではストレス・食生活の偏り・化粧などで成人以降も多く見られます。
ほとんどが顔面に出る症状であることから、患者にとっては精神的ダメージが大きいです。
また、数年の長い経過で軽快、再熱を繰り返すうちに、難治の肥厚性あるいは陥凹性の瘢痕を残す事もあることから、現在では慢性炎症性疾患の1つと考えられています。
病因
痤瘡(にきび)の発症機序としては、①男性ホルモンの作用による皮脂の分泌亢進と②毛漏斗部の角化異常による閉塞によって、毛包内に皮脂の貯留が起こります。毛包内に皮脂が貯留し、炎症がない臨床症状を面皰(白ニキビ)とよびます。
毛包には好脂性嫌気性グラム陽性桿菌であるPropionibacterium acnes(以下P.acnes)が常在しており、特に面皰内では増殖しやすい環境にあります。
③面皰内でP.acnesが増菌して炎症を生じると、丘疹や膿疱のような炎症性皮疹(赤ニキビや膿をもったニキビ)に移行します。
その後、炎症が毛包の周囲へ波及すると、炎症消失後に不可逆性の肥厚性あるいは陥凹性の瘢痕(ニキビ痕)を残す事があります。
症状
痤瘡(にきび)は脂腺性毛包に生じるため、脂腺性毛包の分布する顔面、全胸部、上背部にみられます。
個疹は面皰(①)に始まり、その後丘疹や膿疱(②)へと移行します。
多くは炎症後の紅斑を経て色素沈着となり、最終的には完治しますが、時に炎症が強いと結節や嚢腫(③)となり、また陥凹性あるいは肥厚性の瘢痕を残して治癒します。痤瘡(にきび)はこのように色々な症状を取りうる疾患であり、実際の臨床像ではこれらが混在している事が1つの特徴です。
① 面皰(めんぽう)=白ニキビ
古い角質が詰まり、角栓ができて毛穴が閉塞したり、男性ホルモンの分泌量が増加し、皮脂の分泌が多量になったりすると、皮脂が毛穴の中にたまって『面皰(コメド)』ができます。
アクネ菌は、皮脂を好み酸素を嫌うため、発育に好都合な面皰の中で増殖します。
② 膿疱(のうほう)
毛穴の中で過剰に増殖したアクネ菌は、炎症を起こす物資をつくります。
そして、炎症が起こると、ニキビは赤く盛り上がって『紅色丘疹』(赤ニキビ)となったり、膿がたまって『膿疱』(膿をもったニキビ)となります。
① 嚢腫(のうしゅ)
さらに、炎症が拡大して進行すると、毛穴の壁が破壊され、皮下に膿のふくろができて『嚢腫』となったり、硬く盛り上がって『硬結』ができます。
強い炎症のあとには、凸凹したニキビ痕(瘢痕)を残す事があります。
健康な肌
①面皰(コメド)
②紅色丘疹・膿疱
③硬結・嚢腫
ニキビの赤み
ニキビの「赤み」は主に2種類あります。
- 炎症を起こしたニキビ(紅色丘疹・膿疱)による赤み
- 炎症後の一時的な赤身(紅斑)
- 紅色丘疹
- 膿疱
- 炎症後の紅斑
- 紅色丘疹や膿疱が治った炎症後の紅斑は、時間経過とともに自然によくなります。しかし、硬結や嚢腫に進化すると、ニキビ痕(瘢痕)が残ることもあります。
- 炎症を起こしたニキビには、内服・外用抗菌薬を使用して、炎症を長引かせないようにしましょう。
- 瘢痕を予防し、炎症後の紅斑をなくすには紅色丘疹・膿疱の早期治療と、再発しないための維持が大切です。
~炎症性ニキビは早期治療が重要です~
治療
痤瘡(にきび)は早期治療が最も重要です。
丘疹や膿疱が治った炎症後の紅斑は、時間の経過とともに自然によくなります。
しかし、硬結や嚢腫に進展すると、ニキビ痕(瘢痕)が残る事があります。
炎症を起こした痤瘡(にきび)には、抗生剤内服、抗菌薬やアダパレン、過酸化ベンゾイルなどの外用剤を使用して、炎症を長引かせないようにしましょう。
瘢痕を予防し、炎症後の紅斑をなくすには早期治療と、再発しないように維持することが大切です。
生理前に悪くなる女性や、なかなか良くならないニキビには漢方を併用するとさらに効果的です。
皮脂を抑える目的で、ビタミンB2やB6も継続的に内服します。